「疲れに疲れたシゴト帰り、たまにやってしまうのが高級肉片(A5牛肉)を駅前で(自分の分だけ)買って何食わぬ顔で家に帰り、一人キッチンに入ってフライパンで丁寧に焼いて食うこと。赤ワインのコップを片手に。これが自分にとって、一番のエネルギーめしです。
家族が晩ご飯を済ませた時間帯にフラッと帰るというのもポイントで、みんなはお腹いっぱいだから、僕がシレッと旨そうな肉を焼いて食べていても、あまり嫌な顔をしません。
家族とは優しいものです」ー平床政治ー
お肉を室温に戻すところから、スタート!
「今日はミスっちゃうといけないから2枚買ったけど、いつもは1枚。こんなに油がガッツリ入ってて、そんなにいっぱい食べられないでしょ。これ1枚でちょうどいいんだよね。A5ランクの黒毛和牛のハネシタって部位。肩ロースの下の部分です」
「焼く30分くらい前に冷蔵庫から出して室温に戻したら、適当に塩とコショウを振って……」
「こんな感じで下味をつけます」
「ニンニクは1枚につき1個。香りが立つように、包丁の腹で潰します。横に並べているのは、焼いた肉につける調味料。このへんのやつを、一切れずつ載っけて食べながら酒飲むの」
「熱したフライパンに、肉、その上に潰したニンニクを。フライパンは、ずっと鉄製。うちには鉄のフライパンしかないんだよねー。かっぱ橋の釜浅商店で買いました。重量感があって、料理やってるぜ!って感じもあるし、熱の伝わりがいいからすぐ熱くなるし、熱いままでいてくれるのがいい。扱いとか手入れは大変だけど。一番小さいやつは、もう10年以上使ってるかな」
「はじめは強火で焼き目をつけていきます。焼き色がついたら少し火を弱めて30秒。裏返しにして、裏も焼き目がつくまで強火で焼きます」
「焼き目がついたら仕上げに赤ワインを少々ふりかけて、アルコール分を一気に飛ばして香りづけ。肉の旨みも閉じ込めます」
「肉の上にバターを載せて、バルサミコ酢を少々……」
「しっかり火を通さなくてもいい肉だけど、ちょっとだけ余熱処理。蓋をして30秒ほど待ちます」
「キャンプで高い肉買って炭火で焼くのが一番旨いから、キャンプでもよくやります。この肉はオーケー(ストア)で、2枚で1800円だったけど、お店で食べたら5000円くらいするんじゃない?」
「ピンクペッパーを散らして、レモンを添えて……いただきます!」
「旨い!」
これは、旨くないわけがないでしょう。
ところで、セイジさんでも、どんよりとする日なんて、あるのでしょうか。
「暇なときはめっちゃ暇で、大相撲とか見てるんだけど、シゴトって、重なるときは重なるでしょ。そこに飲み疲れが重なろうものなら、もう、どよ〜んですよ!」
「今日はお皿に盛っているけれど、普段は、アツアツの油が滴っているやつを、フライパンで切ってそのまま食べてます。ワインを立ち飲みしながらね」
しかし、こんなにおいしそうなお肉。
子どもたちが寄ってこないはずがないと思うのですが……。
「食べたいって言ってくる奴にはあげるよ。“父ちゃん、一切れちょうだい!”って来られたら、拒みはしない。(3番目の)スイちゃんなんて、一切れもらったはいいが噛みきれなくて、雑巾みたいになったやつをリターンしてくるけれど(笑)」
日常的に家族のごはんを作り、ケータリングやレシピ撮影でも、たくさんのごはんを作って提供するセイジさん。
普段は誰かのためのごはんを作ることが多いからこそ、疲れたときには、自分のためのとっておきのエネルギーめしで満たしてあげる。それが、明日のおいしいごはんの素になっているのかもしれません。
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PROFILE
平床政治
日本語・英語のバイリンガルとして「声」を生業とするナレーター。学生時代から音楽活動に精を出し、現在もHermann H. & The PacemakersやAthensでバンド活動をしながら広告、ドラマ音楽などの制作も手がける。文章を綴るのも大いなる趣味である。いつの間にか4児の父となり、妻でモデルであるasacoとフードユニットmafioを展開している。多角的に生きることを目標とする42歳双子座。
【Instagram】本人アカウント:hiratoko_seiji マフィオアカウント: hiratoko_mafio
写真/矢部ひとみ 取材・文/羽田朋美(Neem Tree)