生きかたのヒントvol.3「植物の世話をする」

底抜けに明るくて、いつも笑顔でポジティブで。
“陽”の気しか感じられないイラストレーター・しんかわまさみさんの人生に、くすぶる瞬間なんてあるのかな、と思ったことが、彼女の「生きかたのヒント」について聞いてみたいと感じたきっかけでした。
まみちゃん(いつも通り、この呼び方をさせていただきます)が暮らすお部屋にお邪魔すると、ああ、ここにいたら、そりゃ元気になるよね!という、グリーンあふれる空間が広がっていました。

暮らしの中に緑があるだけで
エネルギーが湧いてくる

大きな窓からたっぷりと入る日の光に照らされて、葉脈がくっきりと浮かび上がる元気なグリーンが視線を引きつけます。どの子たちも、我が世の春を謳歌しているように生き生きとしていて、彼らから放出されるクリーンな酸素は、住まいをより心地よい空間にしています。ふと、腐海の森の植物を集め育てる、ナウシカの秘密の地下室を思い出しました。
「部屋中に植物があるのは、インテリアとして素敵なのもあるけれど、それ以上に、お世話をしていると元気がもらえるから」と、まみちゃんは言います。

福岡に生まれ、25歳で東京に出てくるまで自然との距離が近い環境で育ったまみちゃんは、子どもの頃から、身近な自然からエネルギーをもらうことが日常だったと言います。
「海にはよく行きました。海に立っていると、足もとからバーッて、力がみなぎってくるのを感じるんです。だからチャージしたいときにはいつも海へ行って、裸足で波打ち際に立っていました」
上京するとき、福岡から1つだけ鉢植えを持って来て、部屋の中にエネルギースポットを作ることにしたそうです。以来、自宅に植物を欠かしたことはありません。
「自然の中に身を置くことで培われた感覚は私にとって必要不可欠なので、家の中でも自然を感じられるようにしたいと思いました。自然が作り出す形や色は、何よりもかっこいいと思っています」

時計の横の絵はまみちゃんの作品

毎朝、植物の状態をチェックしながら水やりするのが、まみちゃんの幸せな習慣です。
「植物のお世話をしているときは、どんな葉を伸ばすのかな、どれくらい大きくなるのかな……ということは考えることもあるけれど、ほぼ無心。植物が生き生きとしていてくれればいいですね。それだけで、よろこびを感じます」
我が子のことを、「元気に育ってくれればそれだけでいいですね」と話すお母さんみたいで、愛情深いまみちゃんらしい言い方だな、と感じました。
「息子が小さいときは一緒に植えたり水やりしていたので、小学生のときは、自分のお小遣いで苗を買って来ることもあったなぁ。今でもたまに水やりしてくれています」

植物は、室内だけでなくベランダにも。
「このベランダがとにかく大好きで、朝起きるとまずここに座って、5分くらいボーッとします。天気がいいとここでお茶をしたり、ごはんを食べたり。ミントの葉を摘んで、カップに浮かべてミントティーにしたり。部屋からいつでもベランダに行けるように、晴れた日は網戸もせず、開け放していることが多いですね」

基本的には、外に出るのが好きなアクティブ派。人も好き。
でも、人に会い続けられる人のことはすごいなと思うというから、まみちゃんにとって休息は不可欠のようです。
「もし一週間人に会い続けたら、一週間リセットする時間が欲しいですね。リセットしたいときは、ここ(ベランダ)にいる時間が自ずと増えます。緑に囲まれて座っているだけで、エネルギーを得られちゃう。8人家族で育ち、3人姉妹の1番下だったから、いつもワイワイにぎやかな家庭だったけれど、そういえば、小さい頃から庭のど真ん中に寝転がって芝生を感じていたなぁ。今思うと、そうやってリセットしていたのかも」

“くすぶったことは、ありますか?”
窓の外のとびきりの笑顔に、問いかけてみました。
「楽しむことしか考えていなかったから、40くらいまで、くすぶったことはなかったですね」

話を聞いていると、これまでの人生の中では、まみちゃんも“谷”のときだって経験しています。でも、それを“谷”だと思っていないのが、彼女のすごいところ。
「昔から楽観的で、どんなときも楽しんでいましたね。歳を重ねても基本は変わらないけれど、一度だけ、40過ぎて試練だと思うことがあって(笑)。その後を楽しく生きるために、修正が入ったなって思うような出来事でした。それまでは見えなかった物事の深い部分に気付き、かなりショックを受けましたね(笑)。そのときはつらかったけれど、衝撃が大きいほど一皮むけるというか……バージョンアップして、そこからさらに楽しむためには必要な学びだったので、今はその出来事に感謝しています」

まみちゃんの“その後を楽しく生きるために、修正が入ったなって思うような出来事”という言葉が頭の中でこだましました。人生には確かに、そういう瞬間があります。でも、それをアンラッキーだと思う人や挫折と捉える人は少なくないでしょう。
すべて乗り越えた“その後”に光を当てるまみちゃんの考え方を素敵だなと思いました。

生まれながらのポジティブ気質というのはあると思いますが、まみちゃんの話から感じたのは、幼い頃から自然の中でエネルギーチャージする術を知っている人は、強い!ということ。
海、大地、そして部屋の植物……。身の回りにあるさまざまな自然を尊び、味方にすることで受けられる恩恵は、計り知れないものがあるでしょう。

まみちゃんの生きかたのヒントには、地球人としてこれから自然とどう向き合っていくかという恒久的なテーマにもつながる、大切にしたい習慣が詰まっていました。

PROFILE

しんかわまさみ
1975年福岡生まれ。1998年よりフリーのイラストレーターとして活動開始。2001年に上京。
広告や雑誌のイラストのほか、2006年に第一子出産以降は子ども向けのワークショップを開始。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、おうち時間を過ごす子どもたちに向けて“白抜き動物ぬりえanimal ”を公開。こちらからフリーダウンロードできます。
金沢大学附属小学校の先生方が中心となって立ち上げたサイト「NEO Teachers」にて、“夢を叶えるために必要なこと”を子どもたちに向けて配信。→こちらから視聴できます。
【HP】http://shinkawamasami.com
【Instagram】shinkawamasami

写真/矢部ひとみ 取材・文/羽田朋美(Neem Tree)