往復書簡 LONDON⇄東京 vol.15|羽田朋美

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

▶︎▶︎▶︎前回はこちら 往復書簡 LONDON⇄東京 vol.14 | 関根麻貴

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マキオくん。

前回マキオくんが手紙をくれたのが2020年の10月6日。

なんと、2年越しの返信になってしまったよ。

失礼をば!

季節は2回もまわり、私は太ったり痩せたりを繰り返し、さらにお互いの暮らしにも、たくさんの変化があったね。

本来なら、私は今、ANA NH211便ロンドン行きに搭乗中のはずでした。

あと4時間ほどでヒースロー空港に到着し、ヒースローエキスプレスでパディントン駅へ。そこからチューブに乗り換えてベーカー・ストリート駅へ。

ファンでもないくせに(笑)、誰もが知る名探偵の名を冠したプチホテルのベッドに腰を下ろし、3日後に迫る、貴女の式に思いを馳せていたことでしょう。

そんな人生に一度の、大切な瞬間に立ち会えないなんて。

マキオくんが言っていたように、

ウソでしょ宇宙!

ホント、この一言に尽きるよ。

まさか、このタイミングで家族3人がコロナに罹るなんて、想像を遥かに超えた“ぶっ込み”でした。

(注:その後、三男坊と私も罹患。階下に暮らす母も陽性となりました)

悔しいな。

今日は1日仕事に専念しようとしたけれど、どうしても気持ちが追いつかず、久しぶりにマキオくんに手紙を書くことにしたよ。

でもね、一番言いたいのは、この言葉。

改めて、結婚おめでとう!

7月に「はろーへねちん わたし結婚することになったよ 10月にこっちで式します」って、実にマキオくんらしいご報告LINEをくれたじゃない。

「実はね」とか前置きもないし、溜めて溜めて発表!とかでもなく……(笑)。

「へねちん、来週ヒマ? ごはん行かない?」って、編集部で残業しているときに声を掛けてくれたみたいに気軽に、そして自然に伝えてくれたよね。

もう、飛び上がるくらい嬉しかった。

もちろん、パートナーのBen(往復書簡の初期に登場したフラットメイトのぶっ飛びメガネおじさんではない)の話は聞いていたから、そう遠くない日に……とは思っていたけれど、形式にとらわれない自由なマキオくんだから、もしかしたら、制度に縛られることなく彼と生涯を共にするのかなという感もあって。

いずれにしたって、お互いに添い遂げたいと思えるほど大切な人に出会えたわけだから、こんなに喜ばしいことはないよ。

イギリスの入国制限が完全解除されて渡航しやすくなったタイミングもありがたく、まぁこ(夫です)とふたりで参列させてもらうことが決まり、ワクワクしながら準備を進めていたよ。

マキオくんはどんなドレスを選ぶのだろう。

スタイリッシュに着こなすんだろうなと思っていたら、

「ウェディングドレスが壊滅的に似合わないからドレスは着ない」って。

ホント最高!

なんだよ、壊滅的にって(笑)。

ぐうの音も出ない。

電話越しの雰囲気だけで、やさしくて素敵な人だってことが伝わるBen(notフラットメイトのぶっ飛びメガネおじさん)に、式当日に“So happy to celebrate this day with you both!”って、カタコトの英語で伝える自分を想像したりしてさ。

まぁこは15年ぶりくらいに、ちゃんとした美容室に行ったんだよ!

マキオくんの結婚式に、変な髪型していくわけにいかないからって無理矢理行かせた(笑)。

いつもはホラ、「へねこ美容室」だから。無免許美容師、わし。

へねこ美容室は、「迅速・丁寧・誠実」がウリだけど、ときどき虎刈りになっちゃうんだよね。

よくもまぁ、虎刈りにされるのに15年間もご愛顧いただいているよなぁ。

ああ、書いていたらまた悲しくなってきた。

やっぱり、行きたかったよ。

傍らで、「おめでとう!」って伝えたかった。

何度も何度も。

「もういいよ、へねちん。わかったからさ」って、マキオくんに笑いながら言われるくらいしつこく、言い続けたかったよ。

「起こることはすべて必然で、トラブルやハプニングもベストなタイミングでやってくる」

って言うけれど、このタイミングはキツかったなぁ。

私だけでも…と、粘り強く14日(金)のエアを調べたりもしたけれど、そもそも濃厚接触者の待機期間の解除日に届いてすらいなかった。

さらに、ゾンビ映画のごとく、家庭内でどんどん感染拡大するもんだから、もはや解除日がいつなのかもわからないくらい。

マキオくん、英語生活で、ルー大柴(懐)みたいなしゃべり方になったって言っていたじゃない。

ロンドンの小洒落たレストランで、「トゥギャザーしようぜ!」とか言って欲しかった(笑)。

あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー!

言いたくないけど言っちゃう。

お約束のあの言葉を、つぶやいてもイイすか?

“どこでもドアがあったらなぁ”

今回ばかりは往生際悪くてごめん。

実に未練がましい手紙になっちゃったけれど、嬉しいこともあったよ。

まず、式を中継で繋いでもらえること。

素敵な提案をありがとう。

大切な瞬間の空気を感じさせてもらえると思っただけで、気持ちが落ち着いたよ。

そして、マキオくんが昨日くれたLINE。

「ベンにへねちんは私の全部を知ってるって話したら、そりゃ絶対早く会わないとねって言ってた」って言葉。

本当だよ!

私、全部知っているよ!

京都だったか大阪だったか忘れたけれど、出張先の駅のトイレで、マキオくんが困り笑いしながら出てきたと思ったら、「携帯流しちゃった!」って言ったこととか。

しかも、到着したばかりなのに(笑)!

歴代彼氏とのアホっぽい話とか、他の人にはドン引きされるようなことも、互いに共有してさ。

ふたりだけしか通じない、へんちくりんな言い回しもいろいろあるよね。

私たち、お互いにさっぱりしているというか、「いつも一緒♡」みたいな関係性ではなくて、この20年間、会わない時間も多々あった。

それでも思いは通じていて、離れていても、なんつーか、マブダチなわけよ。

だから、マキオくんの式に、私が行けないわけがなかった。

考えるだけで悔しくて泣ける。

そして、今は思う存分悔しがることにしたよ。

だって悔しいんだもん。

トーキョーの空の下。

私は今、誰よりも貴女に思いを馳せ、貴女の末永い幸せを祈っています。

マキオくん、本当におめでとう。

心の底から、大好きだ!

「もう、この人ってば……」っていう貴女の表情が最高!.

出会った頃。まぁこ(注:夫です)にこの写真を見せたら、「やばいね」と一言


2022年10月12日(水) へねちん

PROFILE

羽田朋美
6歳・8歳・11歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】murayama_tomomi0716
【blog】https://ameblo.jp/tmm07160102/

関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5