往復書簡 LONDON⇄東京 vol.12|関根麻貴

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

▶︎▶︎▶︎前回はこちら 往復書簡 LONDON⇄東京vol.11 | 羽田朋美

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へねちん

バタバタと過ごしているうちに、前回の便りからあっという間に3週間。ちょっとご無沙汰してしまったけど元気かな?
そして7月は誕生月だね! メッセージも送ったけど、あらためておめでとう。なにかと落ち着かない状況ではあるけれど、新しい歳も元気におもしろく過ごせますように。

この前の書簡の懐かしい話! 『Neem』の沖縄取材旅行のこと。
そうだ、機内で何か話したのを思い出したよ。でもはねちゃんが言うように、不思議な話をしたことまでしか覚えていない(笑)。どうしてだろうね、強烈な内容だったはずなんだけどなぁ。
しかし(一色)紗英さんにUAさん、田辺あゆみさんに根本きこさんと、とても進歩的な考えに触れて、とても刺激をうけた旅だったよね。ほぼ10年が経った今、あの素敵な人たちにまたあらためて話を聞いてみたいとも思う。
しかし書いた記事が部分的に消えていたとは、なかなか謎の出来事。

レストランが再開して、久しぶりの外食! 気持ちのいいテラス席で。

さて、こちらの近況。

イギリスは6月半ばにデパートや服飾雑貨系のお店が再オープン、7月4日からレストランのイートイン営業やヘアサロンが再開、と段階的に規制緩和がされたの。
様子を見に街へ出てみたんだけど、3ヶ月ぶりとはいえいきなり人出が戻るものではないね。徐々に徐々に増えていっている感じ。
デパートは動線が定められ、試着どころか商品に触れるのもNGで「返品できるから、気になるものがあったらとりあえず買ってみたら?」というスタンス。トイレやエレベーターは使えなかった。カジュアルなお店だとものに触ることはできるけど、やっぱり試着は不可。スタッフがフェイスシールドを着けているところもあったし、なんだか不思議な光景だったよ。大多数がマスクを着用しているなんて、少し前には考えられなかったこと。
そんな状況とはいえ、街に人の気配があるのはやっぱりいいなあと思った。第二波も懸念されているし、まだまだ油断はできないけれど、静まりかえった光景を目にしたからこそ「いつも通り」がとてもありがたいものだと感じたよ。

営業再開してすぐのリバティ。
フラワーマーケットが再開したのがいちばん嬉しかったかも。

と、そんなロンドンの話をしながらも、私はいま日本にいるんだよね。
次なる目標に向けて準備をしに戻ってきた。ロンドンを離れるのはとても寂しかったけど、また戻るためにたくさんやることがあって、脳内があれこれ忙しい。
帰国するにあたりいろいろ考えながら、気づいたのは「何でもできるんだな」ってことだった。渡英前の東京の暮らしに戻ることもできるし、それがいちばん安心安全なことだけど、果たしていちばん面白いことかと問われたらイエスではなくて。そして最も望んでいることは結構なチャレンジだけど、「今の」状況や条件、自分の能力で身の振り方を決めるんじゃなくて、好きなほうに向かって「とりあえずやってみる」ってことをしようと思ったの。成功するかどうかはさておき、腹さえくくれば何だってできるし、その結果人生がどう流れるかも楽しみ。ロンドンで暮らしてみて、そういう軽やかさが備わった気がするよ。
先がわからない状況にいて、気がかりなことや怖さもあるけれど、それをどこか面白がっている自分もいるんだよね。ま、気まぐれだから数ヶ月後にはまったく違う道を歩いているかもしれないけど(笑)それはそれで。

フラットの可愛い植物たちは、Benに預けてきた。ちゃんと面倒みてくれるかな(笑)。

せっかくだから帰国の流れも記しておこうかな。

空港も機内もだいぶ人は少なくて、帰りのフライトは乗客が20人ほど! 当然チェックインも搭乗も驚くほどスムーズで、席はまるっと一列使えるし、ここでも今が特殊な時期であることを実感。
羽田空港には予定より20分ほど早く着陸したけど、PCR検査待ちのため機内で2時間待機に。とはいえ座席のエンターテイメント設備が使えるし、ドリンクやスナックも提供してくれたから、快適に過ごすことができたよ。
スタッフに案内されてまずは検査の説明、そして検査、結果待ちの方法確認が済んだらようやく出国。空港を出るまで4時間くらいだったかな。結果は自宅で待つか、政府負担のホテルで2泊3日で待つかの二択で、移動は公共交通機関(タクシーを含む)の使用不可。私は2泊もしたくないから、当日帰宅することにした。預け入れ荷物をピックアップしようとしたら、既に乗客ごとにカートにきっちりセットされていて、ANAスタッフの手書きメッセージが添えられていた。外国のラフな接客に慣れていたから(笑)、こういう気配りが日本の良さだなぁと感じたよ。
検査結果はメールで送られてきて「陰性」。そしていま、ようやく自主隔離期間が終わって外出できるようになったところ。イギリスと日本、両方の状況を見て、日本人って個人レベルではマスク着用や衛生管理など、とてもきちんとしていると思った。反面、為政者はもっとしっかりやって!と相変わらず憤ってる。

人の少ないヒースロー空港。
静かな機内。ここまでの空き具合は、もう経験しないだろうな。

自主隔離が終わって真っ先にしたことは、ヘアカットだった。6ヶ月も伸ばしっぱなしだった髪がスッキリしたら、時差ボケや体のだるさもなんだかととのった気がしたよ。
今週はたくさんの友人知人に会う予定だし、はねちゃんとも間もなく会えるのが楽しみ。

しばらくは東京ー東京(もしくは日本のどこか)の書簡になるけど、引き続きよろしくね。

PROFILE

関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5

羽田朋美
3歳・6歳・9歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】tomomi_26_tree