往復書簡 LONDON⇄東京 vol.5|羽田朋美

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

▶︎▶︎▶︎前回はこちら 往復書簡 LONDON⇄東京 vol.4 | 関根麻貴

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マキオくん

また新しい1週間が始まったね。

マキオくんの言うように、本当に1週間があっという間。
毎日、ほぼ同じことの繰り返しなのに、なぜにこれほど時が経つのが早いのでしょう。

英国のロックダウンも、もうすぐ4週間だね。さらに3週間延長するというニュースを見たよ。そりゃ、そうだよね。
そして日本も、5月7日から元通りの生活になるとは到底思えない。

東京は4月7日の緊急事態宣言発出から、2週間が経とうとしているよ。
前回の私の書簡では、まだ外出自粛要請にとどまっていたね。
何だか、遠い昔のことみたい。
現在は東京の感染者数が200人を超える日も。地方都市にも蔓延が進み、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されたよ。

新聞てやっぱり、ネットのニュースじゃ伝わらない事態の深刻さを伝えてくれるよね。
この太い見出し、久々に見た


医療現場は日に日に逼迫していて、病床は限界に近づいているという報道を毎日目にするようになってしまった。現場の医師も忙しい合間を縫ってメディアで現状を訴え、警鐘を鳴らしてくれているのだけど、まだまだ人出の減少にもばらつきがあるみたい。
政府が求める感染爆発防止のための「接触8割削減」実現には、それでも働きに出なくてはならない人びとへの手厚い休業補償がないと難しいと思った。

前回期待しながら書いた「減収世帯への現金給付金一世帯30万円」も、蓋を開けてみたら給付要件が複雑で限定的。そこへアベノマスク代466億円という驚愕のニュースが飛び込んできたりしたものだから、一気に世論が政府の対応に批判的になったよね。
Twitterで「#ドケチ政権」がトレンド入りしたのには笑ったけど。
ドケチって! ただのケチじゃなくて、「ド」ケチだよ! 
破壊力あるよね。理路整然と政権批判するよりもある意味インパクトあって、最初にタグつけた人のセンスに脱帽だわ。

でも、そうやって小さな声がどんどん大きくなっていって、結果的に「ひとり一律10万円給付(国籍問わず)」が実現したことは本当によかった(野党は以前からずっと求めていたことだったのに、無視されていたのは腹立たしいけれど)!
これもまさに、マキオくんが前回の書簡に書いていた、「人々が口にしたことで見直された」ことだよね。

そしてマキオくんのこの言葉も、すごく心に響いた。
「私たちは『健康で文化的な最低限度の生活』をおくる権利を主張していいし、批判は偏りを正すために大切なこと」

私、昔から憲法の中で25条生存権が一番好きなの。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」って中学のときに習って、泣きそうになった。
「文化的な」の部分に、大切なことがぜんぶ詰まっているなーって。生命・身体の自由はもちろんのこと、表現の自由がなくても文化的な生活は営めない。まして戦争なんてしていたら、完全に無理だもんね。文化的な生活をするには、平和な世の中であることは必須なわけで。そんな権利を全国民が有するって明言されているこの国に生きる自分は、なんて幸せなんだろうって思ったの。

でも、今は残念ながら黙っているだけでは、生存権は守られない。本当に、私たち一人ひとりがしっかりと意思表示をしていかなければならないんだなぁって強く思った。

みん坊の息苦しさと、私のぎっくり腰もどきは、すっかりよくなったよ(踏み台昇降の効果!笑)。
繊細なみん坊にとって、無邪気な弟たちとケンカしながらもわちゃわちゃ(って書いたけどこの言葉あんまり好きじゃない笑。ほっこりと同じくらい苦手)していることが、癒しになったみたい。朝から晩まで、毎日が日曜日の三兄弟が大騒ぎの日々で、電話で仕事の打ち合わせをしている背後から奇声が聞こえてきたりしてかなりカオスだけど、それぞれ遊び相手がいてよかったなぁと思ったよ。

台所(うちはキッチンと言わない笑)で過ごす時間も増えた
子どもたちはピザ作り。長男みん坊は面倒くさがって手伝わないお年頃
おやつづくりはまぁこが担当。この日は豆乳のシフォンケーキ

休校も夏休みを超える長さになってしまったけれど、うちでは、ちゃんとした家庭が行なっている「1日の時間割を作って規則正しく生活させる」っていうのをまったくやっておらず、野放し状態。まぁ、宿題くらいはやるように言うけどね。
でも、これまでは多くの人が至極当然だと思っていた「毎日学校へ行く」という常識がひっくり返ってしまったでしょう。今は学校で勉強することよりも家にいること、つまり、システムより生命が優先されているわけで。会社にしてもそうだけど、これが社会全体に大きなパラダイムシフトのうねりを作っていくと思っている(マキオくんが「この経験を経て、世界には新たな価値観が台頭してくる気がしてならない」と言っていたけれど、本当にそうだと思う)。
そんなパラダイムの転換期を小学生で経験できるなんてすごいことだし、そこには大きな学びがあるはずだし、何より「学校」という枠組みから公然とはずれて自分の好きなように過ごせる経験なんてなかなかないから、自分で考えて、自分の好きなようにやりなさい!と思ったの。
そうしたら、それはもう、毎日楽しそうにしているよ。
先日は、みん坊が朝早起きして、私の父と次男のとりちゃんと一緒に公園に散歩に行ったのね。鴨を見て、ラジオ体操とバスケのパス練をして帰って来たら、すごく楽しかったみたいで、興奮して話してくれた。きっと、誰かに言われてそうしたのではなく、自分で選んでそうしたから、楽しさも気持ちよさもひとしおだったんだろうね。

自分で感じて動けるようになって欲しいから、これからも、もうあれこれ言うのはやめた!

三男坊ぴーさんのマスクはミッフィーよ♡

それと前回の、マキオくんのお肉の話! すごく共感したよ。
「自分が決めたことにすら縛られることがある」という、まさにその感覚!
休校みん坊の毎日を管理することを手放したことで、私自身の心も軽くなった。
今や私たちは、「こうすべきだ」「こうしなければいけない」から解き放たれる段階に来ているのかもしれないね。

そして、その先にあるのは、「幸せに自分を生きる」ということだと思う。
コロナ後の世界が、そんなふうにパラダイムシフトしていけたらなぁ、と思っている。

実は最近、私の中で幸福感に関して大きな変化があったの!
ちょっと長くなりそうなので、次回に見送るね。

乙女おじさんBenに4946(こんなの書く人、イマドキいない〜! シクヨロだよ、シクヨロ)! 

植物はいつだって自由でたくましい。うちの子たちにもこんなふうに育ってほしい

2020年4月21日(火)へねこより

▶︎▶︎▶︎続きはこちら 往復書簡 LONDON⇄東京 vol.6|関根麻貴

PROFILE

羽田朋美
3歳・5歳・9歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】tomomi_26_tree

関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5