往復書簡 LONDON⇄東京 vol.13|羽田朋美

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

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マキオくん

元気にしているかな。

前回の書簡からも、一時帰国中のマキオくんとランチしてからも1ヵ月以上が過ぎてしまい、失礼しちゃったよ!
でも、どうしているかな……と、ふとした瞬間に君を思う我が心は、きっと伝わっているよね。
元来、自分から会おうと誘うことはほとんどない私。そういえば、同じ区内に住んでいるのに、高校時代からの親友とも、もう何年も会っていない。それでも親友って言い切れちゃうのは、会わなくても案じていればそれが伝わるという勝手な思いからなんだけどね。
マキオくんにも同じことを思っている。
だからこまめにLINEで会話したりメッセージ送り合ったりしなくても、ロンドンと東京くらい離れていても、それこそ一年に一度しか会えなくても、会えばすぐいつも通りに戻れる自信があるよ。昨日の電話の会話の続きを楽しむようなノリでね。
…と書きながらも、せっかく日本にいるうちに、もっと会いたいと思う。
暑さが和らいだら、またランチビールしよう。あ、ビールはワシだけか。

まぁこからの誕プレのスワッグ。グリーンはいいよなぁ〜(いいよなおじさん風←知ってる?)

8月の1ヵ月は、久しぶりに風呂にも入れないくらい忙しく働いたよ。
日中は撮影したりアポ取りしたりラフ切ったりして、夕飯終わってからが本番で、原稿書いたり、デザインの戻しをしたり……20年前から、やっていること全然変わらないなーって思いながら。

ずっと机に座りっぱなしだから下腹は出てくるし、夏なのに風呂入る時間もないなんて、だいぶまずいことになっているなと思いつつも、朝までガマンして。土日もキャンプに行った以外は、なんだかんだ働きづめだった。あ、今回はテントの中でも仕事していたんだった笑。
でもこんなご時世だし、仕事をいただけることに感謝しながら、黙々と取り組んでいたよ。
反面、夜中まで働けば働くほど、時代の流れに逆行している違和感とか、ちょっと待て自分!という宇宙からのメッセージ的なものとかが少しずつ膨らんでいったのか、突然、世田谷のNeem Treeのアトリエを引き払って、東京から離れた森の中に新しいNeem Treeを作ろうという思いが湧き起こったんだよね。

それで、実際に物件を探して、資料請求して、八ヶ岳に思いを馳せながら1週間くらい過ごしたかな。自宅はそのままに、Neem Treeだけ拠点を自然豊かな場所にしての二拠点生活を思い描きながらね。
眼前に広がる山々を見ながらウッドデッキでコーヒーを飲む……っていう、デュアルライフとか移住系の雑誌の表紙になりそうな週末を想像しつつ笑。

自宅の残債があるから森の家はローンを組めないとなると、一括で支払える物件を探さなきゃいけないわけで。でも、中古だと、手が届きそうな物件が結構あるんだよね。それでも家中の貯金かき集めなきゃ払えない額だし、購入したら43歳にして貯金ゼロになるにもかかわらず、何だか高揚しちゃって。まぁこ(※夫です)と物件を見に行く日程まで相談する展開に。

ここまでくると、契約まであと少し!…なわけだけど、その後、Neem Treeでの撮影が立て続けにあったのね。撮影終わりで撮った、この書簡のトップにあるNeem Treeの写真を眺めていたら、もう最初から決まっていたかのように、世田谷のNeem Treeを継続することで気持ちが定まり、さらに1年半くらい前から構想はあったものの、なかなか実行に移せずにいた写真館をきちんとやろうという考えに至ったんだ。写真館は主に子どもがメインのものが多いけれど、Neem Treeでは母と子にスポットを当てたいなと思っていて。もう、これまでやってきたことの集大成って感じでね。
それで、今までほとんど使っていなかったB1Fを改装して、一軒家写真館にすることに決めたんだ。今は内装のイメージを考えたり、内装用の資材を探したりしている。

それと同時に、このニームツリー・マガジンの「編集日記」というコーナー(もう半年更新していない…汗)の第一回に書いた「すべての人びとに自分らしく、しあわせに自分を生きてほしい」という思いを、本格的に仕事で実現したいという気持ちが芽生えるようになったの。
編集日記にも書いているけれど、私は「自分が心から満たされると、人は自然と与えられるようになるから、そのプラスの連鎖が広がって、やがて社会を充したら素晴らしい」と思っていて、私の働きかけでしあわせに自分を生きる人が増えたら、こんなに喜ばしいことはないって思ったんだ。
それで、編集の仕事とは別に、私自身のもうひとつの柱として、この思いを形にした新しい仕事をスタートしようと動き始めたよ。
まずはメンタル心理カウンセラーの勉強をスタートすることにしたんだ。その認定資格が取れたら、メンタルトレーナーの講座も受けたいと思ってる。

私は英語ができないけれど、この言葉はスーッと心に入ってきたんだ。

Happiness is all in your mind.

「しあわせはすべて心の中に」と脳内変換しているんだけどね。
本当に、その通りだと思う。
お金とか地位や名誉とか健康とか結婚とか家などといった他人と比較できる“客観的な幸福”ではなく、“自分の人生を愛おしい”ってしみじみと思えることが本当の意味でのしあわせだと思っていて、自分の中にある小さなしあわせをどんどん見つけ、大きくしていくための方法を伝えられる人になろうって決めたんだ。
自分の中にあるしあわせを大きくしていくと、自分の人生を生きている感覚を持つことができる。そして、自分を生きることは、心身の健やかさや、お金を生み出すことにもつながっていくと思っている。

私自身、就職してから今まで、仕事中心の人生で、いつも時間に追われて生きてきたなぁって。
でも、「仕事=自分を生きる」ことだと思っていたから、土日がなくても、どんなに疲弊しても、しあわせだと思ってた。
でも、齢43。そんながむしゃらな仕事への向き合い方も、そろそろ変えていきたい年齢に差し掛かってきたこともあり、いよいよ「人の役に立ちたい」「仕事によって社会をよくしたい」という目標を実現する段階に入ってきたことを感じたよ。

マキオくんが、前回の書簡に、「『今の』状況や条件、自分の能力で身の振り方を決めるんじゃなくて、好きなほうに向かって『とりあえずやってみる』ってことをしようと思った」と書いていたけれど、今の私も、まさに同じ思い。

何だかすごい展開でしょ笑?
しかも考えて考えて考え抜いて…というのではなく、ほとんど直感。
この私の思いつきに、何の不安も疑念も持たずに「いいじゃない!」と言ってくれるまぁこは相変わらず神だと思うけれど。

夏休みの思い出<1>今年は旅行できない代わりに、キャンプ三昧
夏休みの思い出<2>まぁことみん坊と3人でバンクシー展も行ってきたんだった! みん坊が楽しそうだった

8月の終わりから9月初頭は、そんなふうにいろんな変化が起こって、目標が定まった今は、動くのみ!という段階に入ったよ。

vol.5で、外出自粛生活下で感じた、新型コロナのパンデミックがもたらしたパラダイムシフトのうねりについて書いたけれど、この変化こそ、私自身のパラダイムシフトだ!って思った。
私には編集の仕事しかないってずっと思っていたけれど、そんなことないんだなって。
新たな目標ができたら、編集の仕事にもより愛着が湧いて、この仕事も大切に続けていきたいと改めて思ったよ。

会社としては持続化給付金や家賃支援給付金の対象にもなり、今期は順風満帆とは言い難い状況だけど、むしろそういうときこそ発展の芽があると思っていて、今はワクワクしかないよ。

2020年は、私にとって、数秘だと「9」。ダン・ミルマンの『[魂の目的]ソウルナビゲーション』によると完結の年、解放の年。「一つの周期の終了と、新たな周期の始まりを知る年」なんだって。次の春(次の周期)に再び種をまけるように土地を耕す時期なのだそう。
2011年の「9」のときはまだ出版社にいて、産休から戻ったら部署の異動が決まっていて、失意のどん底から雑誌Neem立ち上げ準備をしていたんだった。
2011年は東日本大震災があり、今年は新型コロナのパンデミック。そんな状況も、9年前と重なるよ。

改めて、すごいな、数秘の9年周期。

でも、冬の後には必ず春が来るってわかっているから、恐れずに突き進んでいけるよ。

次にこの書簡を書くときには、どんな変化を報告できるかな。
まずは資格取得の勉強をがんばります笑!

それでは、またね。

2020年9月6日(日)へねちんより

PROFILE

羽田朋美
3歳・6歳・9歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】tomomi_26_tree

関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5