往復書簡 LONDON⇄東京 vol.4|関根麻貴

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

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へねちん

もう4月も中旬だね。
1週間があっという間に過ぎることに驚いているよ。

イギリスは10日(金)から13日(月)までイースターホリデーで4連休。
先週から気温もぐっと上がって、最高の季節がやってきた。そのせいか人出が多くなっているのを少し懸念してるけどね。家篭りのストレスもあるだろうし、気持ちはわかるが、みんなもうちょっと気をつけよう!と思うことも多々。
Benは買い物や運動から帰ってくるたびに「みんなマスクあんまりしてないし距離が近いし、公園にたむろしてる人もいる……」と頭を抱えているよ。私以上に消毒や手洗いもマメにしているし、フラットメイトが同じ感覚を持っているのは助かる。ロックダウンも4週目に入るけど、おかげさまで家では大きなストレスなく過ごせてるかな。

昨日はイースターの定番、ホットクロスバンズでなんとなく気分を味わった

ぎっくり腰手前の症状は大丈夫? 
はねちゃんのように普段が相当アクティブな人は、家篭りで運動量がどんと落ちてしまうんだろうね。いまは回復していることを祈る。
しかし心配しつつも、踏み台昇降ってワードにはちょっと笑ってしまった!

私は数日に1回、長めの散歩をし、ロックダウン2週目からヨガを再開したよ。
四十肩らしきものとヘルニア発覚で(こちらも年齢感が。笑)しばらく休んでいたんだけど、ある日、前屈がまったくできなくなっていることに気づいたの。もうショックすぎて、即座にYoutubeで「シヴァナンダヨガ」を検索しヨガマットを敷いたね。
やり進めるうちに、はじめはガチガチだった体がどんどん柔らかくなっていき、初日にしてヨガのすばらしさを再認識。シヴァナンダヨガは呼吸法とリラクゼーションも含まれているから、朝、1時間の練習を終えるとすっかり体も頭も軽くなって、清々しく一日を始められるの。
ヨガ中にいろんな考えが浮かんでくるのも面白い。前日の嫌なことだったり、ちょっとした心配だったり、あとはnoteやブログに書きたい!と思うことだったり、その日ごとに自分が何を感じているかを観察してる。

こんな状況下ではあるけれど、この生活は、自分のコンディションを見つめる機会になったと思う。

前の書簡に書いたけど、ロックダウンが決定した頃、気持ちが不安定な数日があったでしょう?
そのときふと「お肉が食べたい」と思ったの。昨年夏からあまり食べないようになって、最近はまったく欲していなかったから不思議だったんだけど、口にした瞬間、なんだか元気が出た。
体って何が必要か分かってるんだね。「食べないって決めたから」じゃなくて、その時の感覚を大事にすることが、大切なんだなぁと。
自分が決めたことにすら縛られることがあるなー、と改めて気づかされた出来事でした。

公園にもスーパーにも、至る所に2m離れましょう、というサインが

いまだにあまり現実味がないんだけど、志村、いなくなってしまったね。

訃報を聞いたとき真っ先に思い浮かんだのがお宅のまぁこだったよ。みん坊の心の動きも、なんだか分かるな。子どもはより敏感で、繊細だもんね。
私は大ファンというわけではなかったけど、もちろんドリフを観て育ったし、当たり前すぎて好きも嫌いもないような存在だった。「サザエさん」なんかと同じで、すっかり人生の記憶に染みついているというか。昔は強烈なキャラクターの印象しかなかったけど、近年は自身そのままでメディアに出ることも多かったよね。いつだったか「この人、素だとこんな優しい笑顔するんだなあ」と思ったのを覚えてる。まさか、こんなにあっけなく去ってしまうなんて。

こちらでも皇太子や首相が感染したし、患者数も驚くペースで増えていて、決して人ごとではないと思い知らされた。はねちゃんの言うように「自分が感染していると思って行動する」のが本当に大事だよね。私も外出時はマスク着用、スーパーや歩道では人との距離を保つべく、サササーッと忍者よろしく動いているよ。
自分を守ることは、極限状態で働いているドクターやナース、そして生活必需品を供給してくれる運送業やスーパーで働く人たちを守ることに繋がる。

KEY WORKER(医師や警察、運送業など生活に必須な職業の人たち)へのメッセージに和む
ゴム手袋をしている人も珍しくない

そして、東京、日本はどんな状況なのかな?

情報を見ているかぎりで私が感じているのは……
自らの判断で自粛を決めたり、助け合いが行われていたりと、民間レベルではいろんな努力がなされている一方で、政府には腰が抜けるようなガッカリを与えられる日々。
その理由は、為政者に心がないことだと思った。

イギリスもいま、初動の遅さ、PPE(医療従事者の防護服)の不足、検査数の少なさ(それでも日本の5倍)などなど、国民からいろんな批判が上がってる。とはいえオリンピックスタジアムを丸ごと病院に変えたり、補償を明言したり、命と医療制度を守るため大切なことはやっているという印象。それと比較して日本政府の動きは、国民の安全よりも、いかに経済を保つかが優先されているような政策で、残念ながら、批判されていることの次元がまったく違うと感じる……。

一部で「批判はやめよう」という声もあるようだけど、私は、きちんと税金を払い国を任せているのに、こんな非常時にへんてこな対応しかできないなら、きちんと怒り、物言うことが大事だと思うんだ。実際、和牛券やら風俗労働者への無補償とか、人々が口にしたことで見直されたわけだし。
私たちは「健康で文化的な最低限度の生活」をおくる権利を主張していいし、批判は偏りを正すために大切なこと。感覚的には、食べログでレストランに星つけてコメントするのと同じじゃないだろうか? それくらいの気持ちで評価していいものでは? って思ってる。

こちらでいろんな国の人と政治や社会についての話をするうちに、それをより感じるようになった。
政治って暮らしに直結するものだから、当たり前だよねって。

コロナウィルスがもたらしたこの状況は、私たちにいろんなことを考えさせるね。
なにか、真に大切なものを問われている気がする。
この経験を経て、世界には新たな価値観が台頭してくる気がしてならない。

この緑、外で過ごしたい気持ちは痛いほど分かる

今日も変わらず、陽射しとグリーンがほんとうにきれいだよ。
Benはバルコニーで上半身裸でずっと日光浴しながら過ごしてる。ロンドンでは普通に見る光景だから、こっちは珍しくもなんともないんだけど、彼のエチケットには反するようで、私と会話するときはドアから顔だけ出して話すのがおもしろい。そこだけ英国紳士感出されても……というか、乙女感あるよね。

こんなどうでもいい話でまとめてごめん。
Oasisは、リアムが単独ライブをするようなのでまだ兄弟ゲンカ中のよう。どれだけ溝深いんだろうね。ドリフの映像を見返して、「イングリッシュレッスン」のコントに爆笑し、ヒゲダンスのテーマのかっこよさに気づいたりもしたよ。

ではまた!

2020年4月12日(日)  マ。

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関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5

羽田朋美
3歳・5歳・9歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】tomomi_26_tree