往復書簡 LONDON⇄東京 vol.14|関根麻貴

ロンドンで暮らすマキオくんこと、エディター・関根麻貴と、東京で暮らすへねちんこと、ニームツリー・マガジン編集長・羽田朋美の往復書簡

▶︎▶︎▶︎前回はこちら 往復書簡 LONDON⇄東京 vol.13 | 羽田朋美

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へねちん

気づいたらもう10月だよ。
書簡はお久しぶりになってしまったけど、われわれ、9月末に会えたんだよね。
前回ランチしたのが7月末で、たった2ヶ月の間にお互いいろいろ変化してるのが面白かった。いつも長話になるけど、この前の5時間!はいつも以上の勢いだったなぁ。笑

9月は珍しく、新しい雑誌の仕事で慌ただしくしていたよ。
10日ほど、北陸に取材旅行に行ってたの。大学で上京して以来、ずっと東京しか知らなかったから、違う土地のことを学ぶのはすごく新鮮でいい経験になった。そして地域のカルチャーや習慣、人々など、いろんなものに触れるうちに、私の知っている日本って、ほんの僅かな部分なんだなあと感じたよ。
それぞれの土地にそれぞれの暮らし、考え方、価値観があって……って、当たり前のことなんだけど、それを体感することが、自分の世界を広げてくれていると思う。いつも言ってるけど。
あとは風土と人間の暮らしがいかに結びついているかを再確認したな。目前にどーんと広がる自然は勝手に気持ちを癒してくれるし、北陸のおいしいお蕎麦や豊かな温泉は、ぜんぶ白山連峰のおかげだと知ったら、もう頭が上がらないよね。自然の恩恵を受けながら人は文化を築いてきたんだなぁと、しみじみ。バタバタだったけど、学ぶことの楽しさをあらためて感じられた時間だった。

花粉は辛いけど杉の佇まいは大好き。

フォトグラファーが撮影してる間に、こっそり足湯。

しかし、八ヶ岳との二拠点生活!? からのニームツリー継続、そしてメンタル心理カウンセラーの流れは読んでいて「えええっ!」となったよ。だけど、驚きつつもなるほどね、って感じがした。
はねちゃんはこれまでも「自分らしく、しあわせに自分を生きてほしい」という思いでこのウェブマガジンをやってきて、その伝え方がぐっと直接的になっただけだなぁと。そしてこの前、詳しい話を聞いていて、決めてからの行動の早さ、お金の使い方の潔さに、あらためて尊敬の念を抱いたよ。
ひとことで言うなら「豪傑」って感じかな。言われて嬉しい言葉かどうかは、わかんないけど。笑

とにかく面白いのは、同じタイミングで二人とも編集・ライター以外の仕事にチャレンジし始めたということ。おそらく、少し前まではお互いこの仕事をずっとやっていくつもりだったし、ほかのことなんて考えてなかったよね?

私は、これまでの経験を活かしつつ、好きなものだけ売るウェブストアをやりたいってこの前話したけれど(って、まだ何も具体的に決まってないのに書いちゃってるけど、まあいいか。)、編集者やライターって世の中に「こういうものがありますよ」「これがいいですよ」って伝える役だと思うのね。これまでは、いただいた仕事のなかでそれをやってきたけど、去年、一昨年くらいから、自分が共感できるものだけを紹介したいと思うようになって。
多くの人に情報を伝えるときに、自分が「いい!」と思えないものについて書くことは、なんだか嘘っぽいな、と感じるようになっちゃった。さらに原稿もはかどらないし出来もつまんない(笑)。それで、本当に思うことだけを発信したいと思った。
仕事と割り切ってやることもできるだろうけど、それってなんだか楽しくないなって。あとは社会に嘘ついてる感じもするし、なにより、仕事でさえ好きなものにだけ触れたいわー、と、もう我慢がきかなくなっている。笑
もともと、上質なものが好きだし、もの作りをしている人に話を聞くのが好きだし、そういう出合いにいつも興奮しながら、志ある人やいいものを広める役割を担えたらいいなぁと思ってるよ。

日没時、月と太陽が並んでた。滞在先のホテルは見晴らしがよくて、忙しいなかでも癒された。

そんなこんなで、今は展示会や生産者を訪ねたり、いろんな人と情報交換をしたりと、これからに向けての準備期間。一方でイギリスに戻るためのあれこれも進めていて、さあ、どうなるでしょうって感じだね。社会的にはとても不安定な状況だし、1ヶ月後のことも予測しがたいけれど、不思議と不安はほとんどなくて。好きなように生きてやりたいことに取り組んでるかぎり、心配よりも、面白いとか楽しいって気持ちが勝つんだろうな。
読み慣れない資料を読んだり、細かい書類を書いたり、面倒なことも「大人になったなぁー」と(かなり今さら)感じながらこなしてる。そうしていろいろ取り組んでいると、新しい知識や経験、アイデアが出てきたりして、動くことって大事だなぁと毎度のことながら実感するよ。
そういえばこの書簡をYouTubeでやろうという話も出たよね。まさか裏方志向の私たちからそんな発想が出る日が来るとは、1年前、いや半年前ですら思いもしなかった。笑

いつも美味しく楽しい、千駄ヶ谷の母(と勝手に呼んでいる友人)の癒しの食卓。

この前、数秘の話が出たけど、私も自分の人生を当てはめてみると、数字の意味とライフイベントが合致していて逆らう余地がない。
2015年が「9」で、天変地異みたいなことが起こったもんね。当時は、はねちゃんにも散々話を聞いてもらったし、この世の終わりみたいに絶望してたけど、今じゃそれも笑い話。それで2016年からいろんなことが動き出していって、今年は「5」。実りの「6」に向かっていることがなんだか肌で感じられるんだ。

もう10月ってことは、今年もあと3ヶ月。
コロナウィルスによっていろんな当たり前がひっくり返って、新たな価値観が生まれた、あらためてものすごい1年だなぁと感じる。そして今、この春からの流れを振り返って思うのは、好きな方向を見つめて自分に素直に生きていると、流れは勝手にできるんだなってこと。
意図してポジティブに考えるんじゃなく、自然とそう思う。

はねちゃんはどんどん事が展開していくから、次の書簡でどんなふうに変わっているのか、報告が楽しみ。ブログもこっそり見ているよ。

私もゆっくりだけど、土台作りをがんばりまーす!
今日はこれから、織物を見にゆくよ。

ではまたね。

2020年10月6日(火) マ。

PROFILE

関根麻貴
ファッションエディター/ライター/ディレクター。主な仕事に雑誌『装苑』『FUDGE』『KINFORK』、多数のブランドムック、英国ブランド『MARGARET HOWELL』『SUNSPEL』の日本版カタログ制作など。2019年春よりロンドン暮らしをスタート。東京でもロンドンでも生活は変わらず、ひとり気の向くまま過ごす日々。趣味は写真、映画、アート、コンテンポラリーダンス観賞、旅、ヨガ。モットーは「人生は全部ひまつぶし」。真面目に、全力でひまをつぶしています。
【Instagram 】sekinemaki 
【note】https://note.com/makisekine/m/m48fb72d934d5

羽田朋美
3歳・6歳・9歳の三兄弟の母、編集者。大学卒業後、教職と迷いながらも雑誌編集者の道を諦めきれず、60 社の入社試験を受けて全て落ちたのちの最後の一社である編集プロダクションに「執念」の入社。アイドル誌の編集、アイドルの写真集の編集に携わる。2001年よりローティーン誌『ラブベリー』(徳間書店)編集部勤務。深夜帰宅・徹夜が当たり前の過酷な日々であったが、充実した雑誌編集者ライフを送る。2004年より同誌副編集長・編集長を歴任。2010年長男を出産し、産後2ヶ月で「執念」の職場復帰。ママ雑誌発刊への夢を膨らます。2011年、ママ雑誌『Neem』を企画。2012年2月、同誌を立ち上げ編集長に就任。2013年4月、徳間書店を退社。編集チーム「Neem Tree」を設立。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など自然豊かな地を巡る。
【Instagram】tomomi_26_tree
【blog】https://ameblo.jp/tmm07160102/