人生を豊かにする旅の話 「中村家の家族旅 第5話 また旅にでたい!」

▶︎▶︎▶︎第1話「いろんな世界を見てみたい!」はこちら
▶︎▶︎▶︎第2話「青空の下、トラブル続出」はこちら
▶︎▶︎▶︎第3話「夫・蒼白、息子・発熱。試練の3日」はこちら
▶︎▶︎▶︎第4話「試練は続くよ…家族続々ダウン」はこちら

初海外で子連れに安心のセブ・リゾートに来たはずが、トラブルに翻弄された末、息子は発熱、母は貧血、夫は蕁麻疹……と、ひとり元気な娘を残し、続々体調を崩した中村家。
もはや怖いものはない、と開き直って迎えた5日目。

目覚めとともに自分の体調回復を感じつつ、起きてきた夫と娘も体調は良さそう(夫の蕁麻疹は引いてはいないけど)。息子は……と全員固唾を飲んで見守っていると、起きると同時に「おなかすいた」と息子。熱もなし、呼吸も平常……!
食いしん坊がもどってきた……!

朝食にレストランへ向かうと、日差しが眩しい。みんな元気になり、曇りなき心で歩いていると、美しい景色は更に100倍増しにきらきら見えるじゃありませんか。
もりもりと食べる息子に完全回復を確信。食事後クリニックに寄って、元気になった姿をドクターとナースに見てもらい、晴れて海・プールで遊べることに!
やった……!

白い砂浜と青い海
浅瀬には魚がいっぱい
ホテルのプールの噴射スポットが息子のお気に入りに

たくさん遊んで、おいしいものたべて、散歩して。この旅、5日目にしてやっとやっとトラブルのない1日を過ごせたのでした。

6日目も平穏な時を過ごせる幸せをかみしめる。ドクターやナースをはじめ、ホテルの方々はみんなニコニコ感じよく、片言の英語でも話すのが楽しかった。
お礼の手紙を娘が書いて、いろんな人に渡し、チェックアウト。

7日目の早朝の便で帰国するので、最終日は空港目の前のホテルに泊まることに。小規模ですが、プールもあってジャグジーやガセボも。部屋でわたしのパソコンで効率悪く仕事する夫(第3話参照)を残し、子どもたちと夜まで十分遊べました。

翌日8時の便に乗るため、6時にホテルを出て空港へ。徒歩3分程の直結ホテル、便利でした。出国手続きもスムーズに済み、空港のお店を見る余裕もある、我が家らしからぬゆとりの進行。
セブ産のものを扱うお店を見て時間をつぶしていると、夫がドライマンゴーを手にしてる。土産の定番、ドライマンゴー。家族みんなの好物、ドライマンゴー。なのでショッピングモールに行った日に大量に買いトランクぎゅうぎゅうにつまっています。「マンゴーいっぱい買ったじゃん」と言うと、「あって困らないし」と言いお会計に向かった夫、腑に落ちないといった表情で戻ってきました。
「どしたの?」と聞くと「なんか……ドルの支払いだった。一つ17ドルっていくら?」「……1800円くらいみたいだよ」「めっちゃ高いじゃん!」市内のスーパーで一つ300円くらい売ってたものを既に山盛り買ったのに、最後の最後に1800円で同じものを3袋も買った夫。「まあいいじゃん。これも勉強」……常に前向きな夫。

その後、4時間ほどで成田に到着し、ロビーを歩いていると「見て、蕁麻疹消えた!」と夫の明るい声が響きます。蕁麻疹が帰国と同時に引いていく様に、旅の終わりを感じたのでした。

最後にセブで出会って好きになったもの。

ハロハロ

セブの定番デザートハロハロは、ワークショップで作ったり、ローカル店やホテルでも隙あらば食べました

シニガンスープ

辛くないトムヤムクンみたいな、すっぱしょっぱいスープ。これは家族みんな大好きになったので、ぜひ日本でも作りたい一品

human nature

フィリピン産のオーガニックコスメブランド。国の発展に貢献、貧困層への支援、環境保全を柱にしているブランド。石鹸やリップなど買いました。パッケージも可愛く、種類も多く、選ぶのも楽しかった

なかなか心休まる暇ない旅でしたが、トラブルに次ぐトラブルをみんなで乗り切ったのも、振り返れば楽しい思い出。
家族で話しては大笑いし、その度「またセブに行きたい!」と子どもたち。
「ちがう国も行きたいよ」と夫。
家族でいろんな世界をみてみたい、その導入にしたい、と思っていた目論見は成功したと思われます。
子どもの突発的な病気に対応できたので初の旅にリゾートを選んだのは正解だったとも思います。でもこの旅を通して、作り込まれたリゾートとそれを支えるようにある貧困を目の当たりにして、考えたことはこれからの旅や、自分の暮らしにもつなげていきたいとも思います。

セブに限らず、ここにある矛盾や不平等を感じながら、整えられた人工的なきれいさにだけ目を向けて、感動したりしている場合じゃないんだよな、と最近心底感じるのです。

世界中が抱える矛盾や不平等から目をそらさず、自分の暮らしをひとつひとつ築いて、ほんとうに心が震えるような美しいものに触れてみたい。
英語はしゃべれなくても、多分またトラブルに見舞われても。また家族で旅にでたい!

その日がきっと、また来るのをたのしみに。

(終わり)

PROFILE

中村暁野
1984年生まれ。多摩美術大学映像学科時代から音楽ユニットPoPoyansして活動。2010年、結婚・出産。ひとつの家族を一年間にわたって取材し一冊一家族をとりあげる雑誌、『家族と一年誌 家族』の編集長。家族のかたちや社会との関わり方に悩んだことがきっかけとなり、2015年に『家族』の創刊に至り、取材・制作も自身の家族と行っている。9歳の娘と3歳の息子の母。さまざまな媒体で家族をテーマにした執筆活動も行なっている。
サイトでは家族との日々を365日更新中。
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