人生を豊かにする旅の話「すまあみさんの島日記 第1話 宮古島 2017年春」

休みがあると、日本の島に行きたくなる。

島は自然にあふれていて、都会からすると少し不便なこともあって、かわりにのんびりと時間が流れている。そこで生活をしたいから、できれば1週間とか、長くステイするスタイルの旅を好む。島にいくと私たち家族も変わっていく。テレビも携帯もない日々とか、朝おきがけに海に飛び込むとか、夕飯のおかずをしとめに釣りをするとか、星をながめながらおしゃべりする時間とか。大切な体験が増えて、自然があると、沢山はいらないんだって思うんだ。

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夫のいとこ・北雄くんと妻のみかちゃんは、宮古島に移住をして半楽半農(半分音楽半分農業)生活を営んでいるという。親族の会で会うたびに素敵な話を聞かせてくれて、なんだか好きな人たちだったので、遊びにいってみようということになった。
娘のにこが小学校にあがる春のこと。

まだ桜咲く東京から降りたつと、宮古の風は暖かくて、縮こまった身体がワッとほぐれた感じがした。サトウキビ畑が続く道を進みながら、ずいぶん平べったい地形だなと思った。民泊サイトで手配した家に着くと、門には大きなブーゲンビリアが茂り、裏庭の濃い緑にまぎれてパパイヤが生えていた。色がなんて鮮やかだろうと思った。

宮古島はまだ観光シーズン前で、どこもガラガラに空いていた。幸い天気も良くて、肌に刺す日差しはもうすぐ夏みたい。だから昼間は家族三人で素敵なビーチをたずねて回ることにした。

だいたいどこも、車を置いてからビーチを目指す小道には深いジャングルが広がっていた。
野生の熱帯植物の大きさともじゃもじゃが素敵で興奮する。直径2メートルはありそうな葉っぱが生えていたりして、まるで自分たちがうんと小さくなったみたい。

湿気を含んだ緑がいい匂いで、深呼吸をしながら「大トトロがかくれちゃうね!持って帰りたいね!」なんて言いながら進んだら、景色が抜けて、とうとう海が見えた!

淡い水色!トロリとしたゼリーみたいな色!

生まれてすぐの頃から、海だ川だと遊んできたから、娘は水辺が大好きだ。ちっこいわりにかなりの距離を泳げる自信もある。さらに砂浜だと砂遊びもできるから、永遠と遊ぶことができる。波に押されてごろごろする遊びとか、穴を掘るとか、砂で人形をつくるとか、埋め合うとか、いつものルーティーンに大人は昼寝をはさみながらつき合うはめになる。

幻みたいな入り江にも行った。

探検隊みたいにジャングルをこえ、岩の切通しをこえてやっと到着すると、本当に誰もいない、誰からも見られない場所に到着した。夫ははしゃいで海水パンツを空に放り投げ、シュノーケルだけ持って娘を連れて海へと向かっていった。

ゲラゲラ笑ってみていたら、ちょっと泳いで急いでUターン。
「パパ、どうしてもどるの~」と追う娘。
「浅くってさんごが怖い!傷つける!水着くれ!」だって。

アホかー!

みんな幸せすぎて、ただただ愉快だった。

夕方になると、農作業を終えたいとこの家に、ご飯にあやかりにいくのが毎日の楽しみだった。太陽の恵みをいっぱいに受けて育った有機の野菜を、余すところなくいただく、知恵と工夫にあふれた農家飯。「手伝う!」なんて口実に、この食材をどう調理するのかを見たくてみかちゃんの後ろをついて回った。

パクチーの茎の塩漬け(ご飯にのっけても炒め物の調味料としても絶品!)、麹漬け島ラッキョウ、大蒜と玉ねぎとビーツをじっくり炒めたソースと絡めたピンク色のパスタ、手ごねピザのトッピングにはビーツの茎と葉がたっぷり、あの旅以来娘の好物となったハスクトマトの甘かった味。

愛おしいみかちゃんは、私たちがビーチに行くとき、お重のお弁当を持たせてくれたっけ。嬉しかったな。書いていて思い出しちゃった。

いとこの畑
パクチーの花

最後の日、いとこたちの粋な計らいでみんなで伊良部島のビーチキャンプに行くことになった。
「ビーチで夜を明かしたことなんてない!」とはしゃぐ私たち。
「宮古にはハブが海を渡らなかったから、沖縄で唯一海キャンプができるんだよ」と北雄くん。
へー!!

キャンプサイトのある沢田の浜の景観がまたすごかった。白い砂浜、遠浅のビーチに、大岩がぽこぽこ立っている。やっぱり誰もいないから、日が落ちるまで子どもたちはみんなすっぽんぽんで遊んだ。

それからバーベキューとビールで大人が乾杯を始めたころ、いとこの友人が楽器をかかえて集まってきた。いとこも車からコラ(アフリカのハープみたいな楽器)を出して、ポロリポロリと弾き始め、生楽器の音で宴が始まった。
おのおのが、弾きだしたり、歌いだしたり、みかちゃんはにこにこしながらアフリカンダンスを踊っていて、まるで月の女神さまみたい。子どもたちも大はしゃぎだった。なんて人生の楽しみ方だろう!
本当に、夢見たいな夜だった。

夜が更けて気が付いたら、海がまたすごいことになっていた。
遠浅だった海岸の潮が引いて、向こうまでずっと続く干潟になっていた。あんまり幻想的だったから、ちゃぷちゃぷと散歩をしながら、さっきの余韻にひたった。

あの宴で、わたしも「弾いて、歌い、心のままに踊りたい!」って思った。でも自信もないし、恥ずかしいからあんまりできなかった。心のままに自己を解放できるみんなを、とても眩しく思って見たんだ。

次の日、いとこたちファミリーにぎゅうぎゅうハグをしてから帰路についた。
自然によりそい、シンプルな方法で楽しむすべを持つ人たちの生活に強く憧れながら。

いとこファミリーと

いとこたちの畑については、スマヤナチュラルファーム(https://www.facebook.com/SumayaNatural)をご覧ください。農作物の個人オーダーを受け付けていたり、相談するとファーム体験ができたり、お弁当も作ってくれたりするはずです。

おまけ

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次の旅日記は、徳島県出羽島について。たくさんの友達と見た星空と、島でで会った新しい友人の楽園ガーデンについて書きます。お楽しみに!

PROFILE

すまあみ
ウォールペインター。東京出身。16歳より17年間を北米で過ごす。 NYでライターとして活躍したのち「人を笑顔にする仕事がしたい」とこども部屋のカスタムペインターに転身、 現地でこども部屋やキッズショップのウォールペイントを手掛けた。 2010年に日本へ帰国し長女日子(にこ)を出産。現在は個人宅のほかに、保育施設や公共施設、ファッションストアや百貨店等での作品提供等を行っている。2015年にはファミリアが運営するプリスクールのアート 講師に就任し、こどもの自由な感性によりそったアート教育に従事している。
【HP】https://www.amisuma.com/  
【Instagram】https://www.instagram.com/amisuma/?hl=ja