人生を豊かにする旅の話「中村家の家族旅 第4話 試練は続くよ…家族続々ダウン」

▶︎▶︎▶︎第1話「いろんな世界を見てみたい!」はこちら
▶︎▶︎▶︎第2話「青空の下、トラブル続出」はこちら
▶︎▶︎▶︎第3話「夫・蒼白、息子・発熱。試練の3日」はこちら

初海外旅行で子連れにも安心のリゾート・セブに来たはずが続出するトラブルに翻弄され、さらには息子が寝込んでしまった……!という試練の4日目。
そんな状態でホテルをチェックアウトし、次のホテルに移動しなくてはいけません。熱い息子を抱っこし、パッキングした荷物を押し、タクシーのロビーでタクシーを待つ。
部屋から直接ラグーンに飛び込めるというこの上ない贅沢を大して味わうことできぬまま、3泊お世話になったホテルとサヨ~ナラ~。とはいえ、これから2泊するのも家族連れに安心の大型ホテル(クリニックも併設)。約30分ほどの乗車で無事到着。
タクシー代は日本より安いので大変ありがたい。さてチェックインにはまだ随分早いものの、息子の不調を伝えると、早々に部屋に通してもらえることになり、しかもクリニックのドクターが部屋まで来てくれることに。これまた大変ありがたい……。

早々にベッドに横になる息子……

すぐに部屋にきてくれたドクター。息子を見て何か色々言っている。けれども相変わらず「ワッツハプン??」状態のわたしと夫。ドクターにため息つかれるの、早くも慣れてきました。お互い全力でコミュニケーションを重ね、どうやら16時にホテル内のクリニックに来い、と言っている部分だけは理解したわたし。咳止めらしき薬も渡され、今飲めと言われたことも理解したわたし。ドクターが去った後、夫が「今ポケトークが使えたら……」とつぶやき(2話参照)、早々に壊してしまったことが悔やまれます……。とはいえ、息子の状態は落ち着いており、1日安静にすればいつものように良くなる気がしました。

眠った息子を見つつ部屋で夫が仕事をするというので、娘とホテルを散策。海やプールで遊びたい娘に、明日息子の様子次第で遊ぼうと、治れ治れ~と2人念を飛ばします。

ラウンジでおやつをもらったり

部屋に戻り、ちょうどよい時間だったので息子を連れてクリニックへ。

滞在中、多分一番通い詰めた場所がこのクリニック……

医療的な会話をするのに単語と身振り手振りでは限界を感じてたので、朝からの様子と前のホテルのクリニックでしてもらった処置などをグーグル翻訳し、スマホ越しに会話すると、時間はかかるものの意思疎通できるように(Google先生!)。
ドクターからホテルの外の病院に一緒に行くか?とも聞かれましたが、いつも1日眠れば回復している旨を伝えると、呼吸がゼーゼーするのが心配だから何かあったらすぐホテル内クリニックに来るように、とのこと。ナースもドクターもみんなにとても親切で子どもにやさしい……と異国のあたたかさに感動しつつ、息子もお腹すいた、と回復の兆し。こちらのホテルではラウンジにて無料で軽食が食べられたので、部屋に戻る前に寄り、簡単に食事。息子もフルーツなど食べる。

そんなこんなで部屋でゆっくり過ごしていると夜19時。ピンポーン、とチャイム。ナースが様子を見にきてくれたのです。
子どもたちはアニメを見ており、テレビ画面に釘付けの息子に聴診器を当て、心音や呼吸音を聞いたナース、何やら深刻な表情でわたしに向き直るではありませんか。「His breath」「Very noisy」と呼吸に雑音がする、と言っています。Google先生を取り出し長文をピコピコ打ち日本語に変換、わたしに渡します。
「病院に行った方がいいと思う。保険には入っていますか?」どえええええ、と慄くわたし。息子はいつもの風邪症状の経過をそのまま辿っており、朝になれば呼吸も落ち着き、元気になる予感しかしていない……けど「病院に行ったほうがいい」と言われると不安になる。
だけどフィリピンの病院で言葉もよくわからないままに何か処置を受けるって……等ぐるぐるし「保険には入っています。病院でどんな処置を?」とピコピコして英語変換、ナースへ。「医師はいくつかの処置をためす。今夜は入院して明日戻ってくることになると思う」

……にゅにゅにゅ入院!?

Google先生を握りしめる手が汗ばみ目の前がかすみ、猛烈な吐き気で思わずベッドに座りこんでしまったわたし。
ベッドにて息子を抱っこしていた夫の「ど、どうしたの? 話し中に座っちゃ失礼だよ」という声が聞こえつつも、座っていることすら無理で寝転がってしまうわたし。冷汗が吹き出します。驚いたナースに「dizzy?(めまい?)」と尋ねらても「Oh noOh no…」としか言えない……。
貧血だと伝えたいのにオーノーしか出てこない自分! 
息子を抱え身動きとれない夫が「ママにお水渡してあげて!」と頼むも、アニメに夢中の娘事態を把握できず役に立たず!
夫、娘を叱りだすも娘は何がなんだかで突如叱られたことにむしろキレ返す! ……カオス!!

震える手でGoogle翻訳をピコピコ……「息子が心配で貧血。慣れない場所で移動するより、部屋で安静にして一晩様子をみるほうが息子には負担がないとおもう」と打ち込む。
「大丈夫、安心して」とナース。
「わかった。様子をみて何かあったらすぐクリニックにきて。回復しても朝クリニックにきて」とピコピコ。

ナースが笑顔で去った後、貧血の母、喧嘩をした父と娘、寝込み中の息子の一家が過ごす部屋は殺伐としております。

ふと腕をまくった夫の「あ…蕁麻疹…」というつぶやき。

ストレスフルな日々のピーク、いよいよ夫に蕁麻疹まで発生……。家族の健康回復とこの先トラブルが何も起こらないことを全力で願って4日目、就寝!!

5日目、中村家に光は差すのか否か…!!

PROFILE

中村暁野
1984年生まれ。多摩美術大学映像学科時代から音楽ユニットPoPoyansして活動。2010年、結婚・出産。ひとつの家族を一年間にわたって取材し一冊一家族をとりあげる雑誌、『家族と一年誌 家族』の編集長。家族のかたちや社会との関わり方に悩んだことがきっかけとなり、2015年に『家族』の創刊に至り、取材・制作も自身の家族と行っている。9歳の娘と3歳の息子の母。さまざまな媒体で家族をテーマにした執筆活動も行なっている。
サイトでは家族との日々を365日更新中。
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