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さて、積年の思いが詰まった初・家族海外旅。約4時間のフライトで無事セブ、マクタン空港に到着しました。
時刻は19時。子どもたちも元気。入国審査の長い列に並ぶ間、夫に「何日滞在かと聞かれたらこう答えるんだよ」と伝達。夫は「海外コワイ」と旅行に消極的だったので、段取りや事前の準備など、今回すべてわたしが担当。
そんな手とり足とりにも拘らず、虹彩認証の際、審査のおじさんに指示された場所に目線を合わせられずディスコミニケーション。おじさんに苛立たれ、「やっぱコワイ」と震える夫……。興奮気味の子どもたちをなだめつつも送迎車を探し乗り込み、ホテルに向かいます。ぎゅうぎゅうに人が乗った車やバイクが無数に行き交う舗装されていない道を、たくさんの人、犬、鶏などが行き交う熱気。
窓の外を夢中で見ているうちに、ホテルに到着しました。
滞在する3つのホテルのうち、ここは海水を引き込んだラグーンが全体に広がり、部屋から直接飛び込めるというホテル。広いホテル内の移動は主にカートです。
チェックインし、部屋番号を伝え、荷物と一緒に乗り込みびゅーんとお部屋へ。
気づけば21時で、普段子どもは寝ている時間。ですが夕飯がまだなので、ルームサービスを頼むことに。英語できないわたしと夫。電話は難易度高いけど、メニューくらいはなんとか……と、無事注文でき、少し自信をつけたわたしはフロントにも電話してみました。
椅子が2脚しかなく、食事時にもう一脚借りたかったのです。
「Please give me one chair」と言うも発音が悪いのか伝わらず、「one chair」と繰り返していると、娘が「ママ、これ使いなよ!」とwifiレンタルサービスでついてきた翻訳機“ポケトーク”を出してきてくれました。ポケトークは日本語で話すと、瞬時に翻訳し音声化してくれる素晴らしいアイテム。すかさず夫が「椅子をください」と話しかけ、英語に変換! 頼んだ、ポケトーク!
しかし、部屋に響き渡ったのは「Please kiss me」という言葉でした。
夫、痛恨の滑舌の悪さ!
キスをねだってどうするんだ……。
電話先の困惑が伝わってきます。娘と夫はベッドに倒れ笑っているし、息子もつられて笑っている。あきらめの境地に陥っていると、少し日本語が話せるというスタッフさんが現れ、無事ルームサービスと椅子を持ってきてくれました……。
キスミーでどっと疲れ、1日目終了です。
2日目、窓を開けると、何て気持ち良いの~!! ここは楽園?
さて、ホテルのプールや海で遊び、夕方ローカルレストランに行くのが2日目の予定。
食事の後、向こう岸にある子どもプールゾーンに行くことに。水着に着替え、娘が浮き輪を持ち、夫が息子を肩車し、わたしが貴重品の入った防水バッグを抱え、腰の高さほどの海水を歩いて渡り、子どもゾーンへ到着。
ふと見ると、防水のはずのバッグの中に水がタップンタップンに入っているではありませんか…! 慌ててひっくり返したものの、無事だったのは携帯だけで、他のすべてが水没。その中には旅のお守り的存在ポケトーク、そして夫の動画専用小型カメラも……。
「なななななにやってるの?!」と夫。青ざめるわたし。拭き乾かすも電源入らず。よりによって海水だったのが致命傷……。「まだ何にも映像とってないよ」と夫はぼやき、ポケトークのレンタルプランが破損保証付きだったかどうか、メールを遡り、血眼で調べるわたし。セブの晴天の下、こんなにもそぐわない行動があるでしょうか……。
保証付きプランではあったものの、旅のほぼ初めにカメラと翻訳機が壊れ、とびきりの子どもの笑顔の横で両親の顔は引きつっております。それにしても、ポケトークの最初で最期の仕事が「Please kiss me」だなんて。不憫……。
しかし、こういうとき、夫はパッと切り替えられる人です。「もういいじゃん、楽しもう」と、水没事故がなかったかのように全力で子どもと遊び始めました。こういうところ、この人のとても良いところ。心広いね。
おかげで(なんとか)楽しい時間を過ごすことができました。
夕方になり、ローカルフードが食べられるレストランへ。
わたしたち家族はアジアのごはんが大好き。お店まではタクシーで向かいます。
値段は事前に大体の相場を確認し、片言の英語で交渉。基本とても安いので、タクシーは使い易い。タクシーのおじちゃんに2時間後、また迎えに来てもらう約束をし、食事へ。
大満足の食事が思ったより早く終わったので、周辺を散策することに。調べてみると徒歩5分くらいの場所にスーパーがある模様。行ってみようかとお店を出て、今まで車の窓越しに感じていた熱気を直に体感しながらてくてく。
すると、トライシクルというサイドカー付きバイクのおじちゃんたちがひっきりなしに話しかけてきます。トライシクルは地元の人が乗り合って使う移動手段。何度か断るも日本語ができるおじちゃんに「スーパー? いくよ!」と言われた夫が「OKOK!」と、値段交渉もせぬままあっさり受け入れ乗ることに。ごうんごうん揺れながら走りだし「おおお」と思わず声がでた……と思うや否や、約10秒でスーパーに到着。実は我々が誘われた場所の目と鼻の先にスーパーはあったのでありました……。
「かえりもおくる!」とおじちゃん。
スーパーを回る間もついてくるおじちゃん。
強制的に帰りも送ってくれるおじちゃん。
わずか2分ほどの乗車にして、数十分タクシーに乗る数倍の値段をふっかけてくるおじちゃん。
緊張感満載の笑顔で「OKOK!」と受け入れる夫。おじちゃんを見送りながら「いや、いい経験したね!」と言う夫……。ぼったくりにも夫の心の広さは発揮されるのだなあ、と思いながら初トライシクルが終了したのでした……。
タクシーのおじちゃんと再会した時の安心感よ。
次回、3日目も中村家に容赦ないトラブルがおそいかかります……。
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PROFILE
中村暁野
1984年生まれ。多摩美術大学映像学科時代から音楽ユニットPoPoyansして活動。2010年、結婚・出産。ひとつの家族を一年間にわたって取材し一冊一家族をとりあげる雑誌、『家族と一年誌 家族』の編集長。家族のかたちや社会との関わり方に悩んだことがきっかけとなり、2015年に『家族』の創刊に至り、取材・制作も自身の家族と行っている。9歳の娘と3歳の息子の母。さまざまな媒体で家族をテーマにした執筆活動も行なっている。
サイトでは家族との日々を365日更新中。
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