人生を豊かにする旅の話「中村家の家族旅 第3話 夫・蒼白、息子・発熱。試練の3日」

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初海外旅行で子連れにも安心のリゾート・セブに来たはずが、続出するトラブルに翻弄されつつ(英語がてんでダメなのに翻訳機が壊れる、カメラが壊れる、ぼったくりにあうなどなど)、迎えた3日目の朝。

心洗われる晴天におはようと言いながら、ゆっくり朝ごはんを食べられる幸せ。

さて、3日目の予定はわたしと子どもたちはホテルの海やプールで遊ぶ! その間、夫は部屋で仕事! 夕方一緒にフィリピン料理が食べられるローカルレストランへ!……というのんびりしたもの。
さっそく水着に着替え、子どもたちと水遊びしたり、ホテル内を散歩したり。

そろそろお昼というタイミングで一旦部屋に戻ってみたところ、能面のような顔をした夫が腕を組んでパソコンの前に座っています。
わたし「どうしたの?」
夫「充電ができない」
そこには充電切れのマークを示すmacちゃんの姿が。

コンセントの電圧の問題か!?などと夫が言うものの、フィリピンのコンセントは変換器なしでも使用可能と事前に調べていたわたし。そもそもmacの充電器は各国の電圧に対応してるはずだし、現にわたしのmacは充電できる(夫のものと型番がちがい、充電器の差し込み口もちがう)。
ということは夫の充電器が壊れている可能性が大。替えの充電器はない。6泊7日の旅のまだ折り返し前。「終わった……! 日本帰らなきゃ!」と夫。

どよめくわたしと子どもたち。
「ちょっとちょっと、このmacが使えないヤバさはどのくらいなの? 最悪、わたしのじゃできないの?」など、問いただしていくと本当に本当の最悪はわたしのものでもできなくはないと思うがとても効率が悪い(入ってるソフトなど違うので)と夫。
帰りの航空券のこともあるし、「帰りたくないいいい!!」と子どもたちは叫んでいるし、わたしだって帰りたくないし……。

ということで、濡れた水着にタオルを巻いた姿のまま付近にappleの店舗がないか調べると、正規店はない……もののホテルから1時間ほどのセブシティ(マニラに次ぐ都市だそう)のデパートにapple取扱店がある!らしい!とわかり。とりあえず行ってみよう、と何が何やらの子どもたちを着替えさせ、タクシーを呼び、急遽のセブシティ行きが決定。

明るい時間に町の風景を見たのはこの時が初めてで、裸足で鶏を抱えて走っている子どもたちや、道路の隅で火を起こして料理してる家族、小屋の前でiPhoneをいじっている若者。そんな道をちょっと曲がるとものすごく整備された一帯に出て、大きくきれいなデパートがそびえ立っている……。
そんなすべてに圧倒されたままデパート着。

店内にはオーガニック専門店なども

ただひたすらデカイ施設の中でただひたすらapple取り扱い店を探し進んでいると……ありました!

その瞬間、足早に店員さんの前に躍り出、充電器を取り出しジャスチャーでこれと同じものが欲しい、と伝える夫。この旅で初めてわたしに頼らず、自発的に話しかける夫を見ました。

やればできるじゃん(英語は決してできていないが)と思うわたし。しかし夫のチャレンジも虚しく、新しい型の充電器の取り扱いはないことが判明。
ここまで来た意味も、旅の間の夫の仕事の進展目標も、なんと儚く散ったことでしょう……。

「どうするの……?」と尋ねると「もう仕方ない。のんちゃん(わたしです)のでなんとかするよ」と、出ました夫の切り替えの早さ。大丈夫なの?というハラハラは残りつつも、本人が言うのでなんとかなるのでしょう……!!と信じ(るしかない)、せっかくなのでデパート内を散策してみることに。

予定していたローカルレストランには行けなさそうなのでデパート内にあった、
フィリピンでメジャーなファーストフード店で夕食

すっかり日も暮れデパートを出る頃、ずずず……と鼻水が垂れてる息子。慄くわたしと夫。鼻水は彼の不調のサインなのです……。案の定、ホテルに戻った頃にはゼコゼコ咳が出だし、こうなると一気に悪化するのが毎度のこと。咳が止まらず、ほとんど眠れないまま朝となってしまったのでした……。

4日目の朝。息子は気管が弱く、風邪をひくとゼーゼーとクループ症状が出やすい。安静にしていればいつもは1日~2日で治る。だけどこの日は移動日で昼にはチェックアウトし次のホテルに行かなくてはいけません。移動以外は部屋で休んでいれば良くなるかもしれないけれど、ここはフィリピン。もし悪化したら……と迷った末、ホテル内のクリニックに行ってみることに。ホテルを選ぶ際、子連れということで万が一を考え、クリニックが併設されているところを優先したのですが、まさか本当にお世話になるとは……。

クリニックにて、事前に調べた言葉とジェスチャーを交えこちらの言いたいことを伝えることはなんとかできても、ドクターが言ってることがわからない。わからないので「パードン?」と聞き返し(後日友達に『パードンって使う人いないよ!』と笑われた)言い直してもらったところでわからないので「パードン?」と繰り返すという無限ループを繰り返すこと数回、諦めたドクター。単語とジェスチャーで話す方法に切り替えてくれ、なんとかコミュニケーション。どうやら吸入をさせてくれようとしている様子。10分ほど吸入をさせてもらうと息子は少し落ち着いたので、部屋のベッドに寝かし、チェックアウトの準備です。
次のホテルもクリニックが併設されていることが救い。動かないmacとぐったりした息子を抱え、青ざめるわたしと夫を尻目に、ひとりピンピンした娘……。

果たして、娘はわたしと夫の救世主となってくれるのか!?
次回、どうなる中村家!

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PROFILE

中村暁野
1984年生まれ。多摩美術大学映像学科時代から音楽ユニットPoPoyansして活動。2010年、結婚・出産。ひとつの家族を一年間にわたって取材し一冊一家族をとりあげる雑誌、『家族と一年誌 家族』の編集長。家族のかたちや社会との関わり方に悩んだことがきっかけとなり、2015年に『家族』の創刊に至り、取材・制作も自身の家族と行っている。9歳の娘と3歳の息子の母。さまざまな媒体で家族をテーマにした執筆活動も行なっている。
サイトでは家族との日々を365日更新中。
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