人生を豊かにする旅の話「中村家の家族旅 第1話 いろんな世界を見てみたい!」

はじめまして。「家族」をテーマにした、『家族と一年誌 家族』という雑誌を作ったり、ものを書いたりして暮らしている中村暁野といいます。東京から1時間ちょっとの里山に、夫と9歳の娘、3歳の息子、垂れ耳うさぎのバターと暮らしています。

我が家は子連れ取材で旅する機会も多く、子どもたちも慣れたもの。旅は暮らしの一部、と言えなくもない気がします。ただし……それは国内限定の話。実はわたしたちは国外に出たことがほぼない、夫婦だったのです(幼少期除く)。
なので時間があったから台湾に、とか来月仕事でパリに、とか聞くたび「すごいなあ」とポカンと口を開けつつも、なぜかどこかへ行きたいと思うこともなく。新婚旅行も行かず、子を産み育てていたのですが、娘が3歳を過ぎた頃。自分がそれまでとちがった世界に惹かれていることに気づきました。娘が新たなものに出会い生まれるよろこび、驚き。そんな成長を見ているうちに、わたし自身も新しい何かに出会うって楽しい、と思うようになっていたのです。

子どもは多様な文化や社会に触れてほしい、わたしも一緒にいろんな世界に触れてみたい、と海外に行きたいと思うようにもなりました。

さて、そうは思ったものの夫が起業したり、東京を離れ移住したり、息子が生まれたり、目の前のことに必死になっているうちに時はすぎ……気づけば娘は9歳、息子は3歳。子どもが子どもである時間はわずかです。時間がないない言っているうちに大人になってしまう!と、ついに、中村家初の海外旅行を決行することに。

ドイツ、フィンランド、インドネシア……行きたい国は数あれど、今後の意欲に大きく影響するであろう初の海外旅。初回に何より大事なのは、「楽しかった!」と家族みんなが思うこと。
海外怖いと消極的な夫(英語できない)と日常で凡ミスを連発しがちなわたし(英語できない)が子連れで行くにあたって、最初のハードルはとにかく低すぎるほどに低いことが重要です。フライト時間が短く、旅慣れしていない人も行けそうで(つまりある程度観光地)、値段が高くなければ尚うれしい……。となると候補は3ヵ所くらい。
結果、フィリピン・セブ島に行くことにしました。子連れ海外の定番というか王道というか、故に情報がとても多く不安なく行くことができるし、きれいな海で遊べたら子どもたちは間違いなく楽しいし、アジアごはんが大好きな夫も楽しめそう。ホテルはリゾートでも、一歩出るとローカルな暮らしが広がっているというのも、町に出て感じられることがきっとたくさんあるでしょう。

ということで行き先が決まり、準備です。
今回6日間の滞在で、これまさにリゾート!というホテルから空港近くのホテルなど、3つのホテルに泊まってみることにしました。
ちょっと長めの滞在なので、80Lのスーツケースに家族みんなの着替えやパジャマなどの衣類(娘とわたしは一枚で着れるワンピースを3枚とカーディガン、夫と息子はTシャツを3枚と薄手のパンツを2枚とカーディガン、あとはサンダルとビーチサンダル、帽子)、水着や浮き輪といったスイム用品を詰め、35Lのスーツケースには石鹸や歯ブラシ歯磨き粉、ティッシュ、旅の間洗濯する為の洗剤や折りたたみの洗濯干しなど細々したものを詰めることにしました。
あとは夫とわたしの手持ち鞄に各自パソコンや資料等(旅の間も仕事もするので)と機内で息子が遊ぶおもちゃ、シール本など詰めました。ちなみに娘は子ども用キャリーケースに読みたい本を8冊とノートやペン、ぬいぐるみなど詰め自分で引っ張っていくことに。普段薬を飲むことはほぼないのですが、もしもの備えに子ども用腹痛薬、痛み止め、酔い止めなども用意し、wifiの手配も済ませて。子連れ旅サイトやSNSなど大いに参考にさせてもらい、なんと便利な時代でしょう……と感謝いっぱいに準備完了。

当日、成田空港近くの送迎付き長期駐車場に車を預け、空港に向かいます。カウンターでwifiを受け取るとポケトークという同時翻訳機を無料で貸してもらえるお試しサービスがあるというので、借りてみることに。わたしも夫も自信を持って言えるのは「マイネームイズナカムラ!」くらいという英語力なので、これは非常に心強いじゃありませんか。

飛行機は前と後ろ2席ずつだったので、前に夫と娘、後ろにわたしと息子と別れて座り、期待を胸に……さあ出国のとき!

まさかこれから数日間、トラブルに次ぐトラブルに翻弄されるなんて夢にも思っていなかった、このとき。

次回相次ぐ不運が我々に襲いかかります……。

▶︎▶︎▶︎第2話「青空の下、トラブル続出」はこちら

PROFILE

中村暁野
1984年生まれ。多摩美術大学映像学科時代から音楽ユニットPoPoyansして活動。2010年、結婚・出産。ひとつの家族を一年間にわたって取材し一冊一家族をとりあげる雑誌、『家族と一年誌 家族』の編集長。家族のかたちや社会との関わり方に悩んだことがきっかけとなり、2015年に『家族』の創刊に至り、取材・制作も自身の家族と行っている。9歳の娘と3歳の息子の母。さまざまな媒体で家族をテーマにした執筆活動も行なっている。
サイトでは家族との日々を365日更新中。
【HP】http://kazoku-magazine.com
【Instagram】non19841120

写真/矢部ひとみ(トップのトランクの写真)